知らないと怖~いオリーブオイルの世界
パワジオ倶楽部で販売しているオリーブオイルは、いつも必ず現地でどのように製造されているものか、しっかり確認していることはお伝えしていますが、必ずしも全てのお客様がショップの近くの方ではありませんし、あまり深くオイルに興味がある理由ではないので、出来るだけ機会がある事に、オイルの話をさせていただいています。
1週間ちょっと前に、日本からスペインに戻ってから、毎日にようにオイルの出来を、それぞれのメーカーさんと話ていますが、先週はスペインのメーカーCasas de Hualdoウアルドの、今年の出来を実際に確認しに行って参りました。
スペインのトレドにある広大な敷地内に、圧搾工房も設置されている贅沢なメーカーです。写真が圧搾工房の様子。
今年は花が咲くのが2週間くらい遅れたので、実りも遅く2~3週間収穫の時期も遅れています。こうなると寒さとの戦いになります。私も実が寒さで凍ってしまわないかが、一番心配なのですが、マエストロ・デ・アルマサラと呼ばれる工房責任者は、大丈夫であることを、オリーブの実の内部まで詳しく切り刻んで教えてくれました。
ニューオイルについては、次回また詳しくお話しますが、今日は衝撃的だった事実をご紹介します。皆さんにも何度か上質なエクストラ・ヴァージンオリーブオイルが、コールドプレスと呼ばれる一番搾りであることはお伝えしました。そして、加熱をすれば一度搾った実のカスからも再びオイルがとれることも、お伝えしたと思います。
ウアルドには、そのコールドプレスで搾った後の、実のかすを活用して38度以上まで加熱し、2度目のオイルを搾る装置もあるのです。勿論、この2度目に搾ったオイルは、ウアルドでは活用しませんが、まだまだこのオイルを良いオイルと評価し、買って行く業者がたくさん存在するのです。
こちらの写真が、その2度目に加熱し搾ったオイル。
独特なグリーン色であることがわかるでしょうか。これでもオリーブオイル100%ですから、加工して色々なオリーブオイルになるのです。知らなければ済まされてしまうことですが、知ってしまったら、なぜ特定のEVオリーブオイルが高価なものであるか、理解していただけると思います。
もう一枚、近くから見た写真を載せますが、このように澱んだコケで泥々のような状態の液体になっていて、タンクの下の方では、ワックスのような塊も発生しています。味はというと、果物のような香りや心地よい風味は全くなく、ただの油という感じ。この部屋の香りも、加熱をするので、高級なオイルの圧搾をしている部屋の匂いとは全く違います。ずっと何の香りなのか分からなかったのですが、実は大好物の香りだったのです。日本では馴染みがありませんが、アーティーチョークをゆでている時と同じような香りが、この加熱をする圧搾室では感じられました。
わかりやすく言えば、リンゴジュースやオレンジジュースの搾りかすを、オリーブの実のようにペースト状にして加熱し、2回も3回も搾り続けたら、きっとやけに濃厚な汚い色の液体が採れると思います。オリーブは完全に果実のジュースであることが、こんな風に幾つか違う段階のオイルの加工現場を見学してもよ~く分かります。
コールドプレスの上質なオイルを作る難しさも、現場を見学すればするほど分かります。1年間、木を大切に世話して豊作にしても、収穫のタイミングで、もしも実が凍ってしまうようなことがあれば台無しなのです。人間が相当コントロール出来るようになってきていますが、最後の最後はやはり自然の力によるところが多いオリーブ。毎年、皆さんに理想的なものをお届けするために、多くの人が熱心に仕事をしています。
オリーブオイルの世界は知れば知るほど、興味深い事実があり、人間の知恵と自然の賜物であることが分かります。アーリーハーベストも含め、ウアルドのニューオイル『アルベキーナ』は、既にパワジオ倶楽部に空輸便で到着しています。一日も早く楽しんでいただければ幸いです。
chiho